メイセキムーヴ

2013-10-17 コンドームの効果を、技術者視点で娘に淡々と語れる人 [長年日記]

家族で、3億円事件を扱うドラマ「クロコーチ」を見ていました。

そこで主役の黒河内刑事が、愛人を殺した犯人に対して「ゴムはしていたのか?」と尋ねるシーンがありました。

二人の娘から、同時に「ゴムって何?」と尋ねられて、夫婦で固まってしまいました。

しかし、小5の次女はともかく、中3の長女が暗語として「ゴム」を知らないのは、半端ではなくマズイ状況であると思いました。

で、私が何をしたかというと、会社帰りに、ドラッグストアで一番安い420円のモノを購入したのです。

コンドームです。

——-

深夜11時半すぎ、次女が部屋で眠ったのを確認して、長女を掴まえて、リビングのテーブルで話を始めました。

江端:「最初に確認したいが、SEXの仕組みと意義については理解しているんだよな」

長女:「一応。学校でも習ったし」

江端:「では、『ゴム』を教える。これだ。正式名称は『コンドーム』と言われるものだ」

と言いつつ、コンドームの箱を開けて、中身を取り出して、ピンク色のゴムの物体を、伸ばして長女に見せる私。

長女:「コンドームなら知っているけど。そうか、これが、実物のコンドームかー」

江端:「簡単に言えばゴム風船だ。これを男性器に被せて、精液の流出を防ぐことで、受精を妨げる役割をする。もっともポピュラーな避妊具だ」

長女:「そりゃ、分かるんだけど、なんで、わざわざ私にそんなもの見せる訳?」

江端:「コンドームが単なる避妊具にすぎないという認識では、お前の命にかかわると思ったからだ」

長女:「え? 避妊具なんでしょ?」

江端:「避妊の手段は、まだ沢山ある。例えば女性の膣に薬品を入れて、精子を全滅させるという避妊手段もある。一方、単に女性の性器の外に射精すれば、それで安全に避妊できると『誤解』をしているバカもまだいるようだが」

長女:「パパが何を言いたいのか、よく分からないのだけど?」

江端:「コンドームの最大の目的は、『エイズの感染防止』だ」

長女:「エイズ・・・」

江端:「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)。詳しいことは省略するが、感染すると潜伏期間が恐しく長く(10年程度)、発病すれば、原則死に至る病(やまい)だ。現在、完全に治癒できるクスリは存在しない」

長女:「・・・」

江端:「日常の生活では、感染率は恐しく低い。接触感染やキスでも染感は難しい。ところが、SEXにおいては、感染率が跳ね上がるんだ。SEXというのは、性器の激しい摩擦運動を基本とするものだから」

長女:「パパ。もうちょっと、その激しい表現をなんとかできないかな?」

江端:「恥しがっている場合じゃない。お前がHIVやエイズのことを知らないということは、中学3年生レベルは同程度と考えるべきだろう。『ゴム→コンドーム→HIV、エイズ予防』と、直線的に思い出すくらいの教育が、されていないということだ。パパにはこっちのほうがショックだ」

長女:「・・・」

江端:「女性にとって、妊娠のリスクは相当なものだろうが、エイズには『死のリスク』があるんだ」

長女:「わかった! わかった! わかったけど、で、私にどうしろ、と?」

江端:「このコンドームを常時携帯しろ。サイフの中がベストだが、鞄の奥でも構わん」

長女:「えーーー! ヤダよーー!! 彼氏もいないのに、必要ないじゃん?」

江端:「世の中の男が、全て理論的で理性的な生き物であれば、女性が性犯罪の被害者になるはずはない。愛がなくてもSEXはできるぞ。特に男は全く問題ない」

長女:「・・・」

江端:「エイズの怖いところは、潜伏期間の恐しいほどの長さだ。お前の将来の彼氏の、元カノの、元カレの、元カノの、元カレが感染していたとしていれば、その関係者、間違いなく全員感染していて、そして、今でも、その感染を知らないで、元気に毎日生活しているぞ」

長女:「・・・」

江端:「それとな、このコンドームを装着するSEXって、けっこう『気持ち悪い』んだ。多分、男性の殆どは、コンドームを付けないでSEXしたいと思っている。色々理由をつけて、コンドームを拒否する男もいる」

長女:「なんで、そんなことが分かるの?」

江端:「その気持ちが凄く理解できるからだ」

長女:「!」

江端:「というか、コンドームすると勃起が弱くなって、SEXできなくなることが結構、多かったんだ。でな、あれ、行為の最中にSEXが中断してしまうのは、男にとっては『死ぬほど恥しい』」

長女:「あのさ、話の途中で何だけど、私、父親とこういう話をしている状況が『死ぬほど恥しい』んだけど」

江端:「我慢しろ。もう少しで終わる」

長女:「わかった」

江端:「お前が意に沿わない相手から体を要求された時、さっそうと『コンドーム』を出して、そして、今の『エイズ感染のリスク』の話でもしてみろ。絶対にどん引きするから」

長女:「そりゃ、そーだろうねー」

江端:「これは、命懸けで、HIVやエイズと闘っている人には、本当に申し訳ないと思うけど、緊急避難の方便として使わせて貰う、という手もある」

長女:「ん?」

江端:「『私の父親、私の出産時にHIVのキャリアだったけど、それでも、私と「する」?』って言ってみる。賭けてもいいが、そいつ『できなくなる』から 」

長女:「え? 赤ちゃんにも感染するの?」

江端:「遺伝としてはHIVは感染しないよ。でも、パパが感染していれば、ママが感染しているのはほぼ確実だろう? 胎児は、母親の産道を通って「血塗れ」で生まれてくるんだ。滅茶苦茶リスク高いぞ(*1)」

(*1)事前にHIV感染が判っていればリスクをかなり下げることができます。

江端:「ま、何が言いたいのかというと、コンドームの使用を拒否する男は、お前を愛していない男、と同義であると考えて良い、ということだ」

長女:「・・・」

江端:「『ということを、父親から言われたのだけど』と付け加えると、さらに効果的だろう」

長女:「・・・」

江端:「『コンドームを使ったら、その使用数を父に報告しろとも言われている』とまで、言い切れば、完璧だろう」

長女:「ママー、もう、パパと話すの嫌だよーー」

嫁さん:「まあ『コンドームは必ず使うようにしなさい』ということよ」

江端:「で、持ち歩くんだろうな?」

長女:「やだよ!」

江端:「じゃあ、机の引き出しか、ベッドの下に入れておく、とか」

長女:「パパは、自宅で娘が『やっていて』もいいのか!」

江端:「そりゃ、よかないが、娘の死のリスクに比べれば、受忍できる範囲だ」

長女:「ママー! パパを、なんとかしてよーーー!!」

——-

という訳で、折角、私の買ってきたコンドームは、タンスの引き出しに格納されることになりました。

その後、コンドームに1リットル近い水が入ることを実験して、日本の技術力を自慢したり、現状の日本における生殖技術について娘に語っていたら、午前2時近くになってしまいました。

——-

翌朝、嫁さんに車で駅までおくって貰いながら、二人で会話をしていました。

江端:「あの手の話をするのは、母親の方がプロパーだと思うんだけどな」

嫁さん:「コンドームの効果を、技術者視点で淡々と娘に語れる人がいるんだから、別にいいんじゃないの?」

luckgaki:

戯言
k32ru:

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